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111

--砂漠の迷宮--

カブト「ほら、水を飲んでおけ。倒れるぞ」

勇者「……」

カブトはキャンプセットを組み立てて食事を作っている。

カブト「飯も食え。おばあちゃんが言っていた。食事こそ最高の至福だと」

勇者「……」

カブト「……やれやれ。仕方ない、俺一人で全部食べるとしよう」

勇者「……なんでこんなことをするの?」

カブト「……なんのことだ」

勇者「私を殺せっていう命令でここまで来たんでしょ?」

カブト「あぁ」

勇者「なのに人質をとるなんて、随分面倒くさいマネをするじゃない」

カブト「……ならば逆に質問したい。なぜあの時わざと捕まった?」
112

--砂漠の迷宮--

勇者「……」

カブト「嘘はつくなよ?俺は嘘を信じるほど安い男ではない」

勇者「……盗賊に最後のチャンスを与えたかったのよ」

カブト「最後のチャンス?」

勇者「私と縁を切り、普通の生活に戻るチャンス……」

カブト「……やれやれ。これだから女は身勝手だ」

勇者「!?」

カブト「助けに来なければこのまま大人しく死ぬつもりか……。あいつが本当に助けに来るか、その覚悟の程を試したのか?」

勇者「……」

カブト「男の覚悟を図るな」

勇者「っ!!」



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--砂漠の迷宮--

カブト「あいつはきっと来るだろう。おばあちゃんが言っていた。自分の好きな女の子も守れずになにが男か、と」

勇者(どんなおばあちゃんなんだろう……)


--砂漠--

盗賊「はっ、はっ!!」



--砂漠の迷宮--

カブト「俺にはわかる。俺にも大事な妹がいるからな。妹を守るためならばなんでもしてみせる」


--砂漠--

盗賊「はっ、はっ!!」


--砂漠の迷宮--

カブト「あいつは助けにここにきて、そして俺と戦って、死ぬ」



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--砂漠の迷宮--

勇者「……そうだよね、あいつ馬鹿だもん。絶対来るに決まってる……なんで試そうとしたんだろ……やっぱり私馬鹿なのかな」

カブト「……」

勇者「でもだって……それでも、少しでも不幸にならないでいて欲しいんだもの……!!」

カブト「……」

勇者「だってやっぱり……好きだもん……私といたら不幸になるのが目に見えてる……嫌なんだよ、盗賊の気持ちが痛いほどわかるから……!!」

カブト「……お前といると不幸になると誰が決めた。そしてそれをあいつが嫌だと言ったのか?」

勇者「っ!」

カブト「そんなもの……一緒に不幸になればいいだけの話だろう」

盗賊「ゆううううううしゃあああああああああああああああ!!」

勇者「!!」



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--砂漠の迷宮--

盗賊「はっ、はっ、はっ!!」

カブト「……随分と早い到着だ。ディナーには招待したがランチまで招待したつもりはないぞ?」

盗賊「別に時間なんて、些細なことだろうが!!それよりっ、勇者を返せ!!」

カブト「ふん。おばあちゃんが言っていた。時間を守れない男はナンセンスだと。……まあいい、ならば始めよう。ディナーの時間になる前に」

カブトはそう言って盗賊に向かって進んでいく。

盗賊「っ」

盗賊が構えを取った瞬間、

盗賊「!?消えた!?またあの時と」

カブト「後ろだ」

ドッ!!

盗賊「がっ!!」



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--砂漠の迷宮--

盗賊「がはっ!!」

勇者「盗賊!!」

盗賊「なんだ……これ。超スピードどころじゃねぇぞ……はっ!?こ、これは憧れのあのセリフを言うチャンスなのか!?」

カブト「……?」

盗賊「催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえもっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」

勇者「……」

盗賊「ジョジョを読んでいた俺にぬかりはなかった!!お前のその力の正体わかったぞ、お前、時を止めているなっ!?」

カブト「あぁ」

盗賊「しゃぁ!!見破ったええええええええええええ!?まじで!?まじで止めてんの!?」

カブト「ふっ。見せてやろう。俺のKAGEROUを」

カブトは天に手を翳すと

盗賊「!?」

カブト「これがKAGEROUだ」

カブトはいつのまにか盗賊の後ろに立っていた。



117

--砂漠の迷宮--

盗賊「ぐあ!!」

カブト「どうした。お前の覚悟というものはそんなものか」

盗賊(とんだ裏ボス戦が隠されていたぜ……こんなの攻撃避けられないし、当てようがない。どうしようもねぇじゃねぇか)

ゴッ!!

盗賊「がっ!?」

ごろごろと砂漠を転がる盗賊。

勇者「と、盗賊っ!!」

盗賊「おう!!そこで待ってろ!!」

勇者「っ!?」

盗賊「今なんとかこいつをやっつけるから。そんで一緒にまた旅しよう。どこか、どこか安心して暮らせる場所に行きつくまで!!」

勇者「っ!!」

カブト「……ふっ。ここが墓場だ。KAGEROU」



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--砂漠の迷宮--

盗賊「うおおおおおおおお!!」

勇者「う、うう」

盗賊はありとあらゆる方向から攻撃を受け、そのたびに砂漠に転がされている。

勇者(そんなに強い相手でも、盗賊は闘うんだね)

盗賊「くそっ!!スキル透視眼!!」

ドガっ!!

勇者(それも私なんかのために……)

カブト「ふっ、しぶといじゃないか。KAGEROU!!」

勇者(わかったよ。本当にやっと決心がついた。私は君と一緒に生きる)

盗賊「あぐあっ!!」

勇者(君が一緒にいてくれるというのなら、壊れておかしくなるその時まで……共に)

少年「……苦しいよ?」



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--砂漠の迷宮--

少年「きっと今まで以上に苦しいよ。精神が浸食されていく痛みは想像を絶するんだ。僕は君にそんな目に会って欲しくない……」

勇者「ありがとう。でも大丈夫だよ。だって今までだって苦しかったんだし」

少年「でも」

勇者「これからは盗賊がいてくれる。二人でなら、耐えられる」

少年「……」

盗賊「おおおおお!!空間設置魔法罠、カウンタータイプ」

カブト「罠……?KAGEROU!!」

勇者「二人でならきっと……不幸も幸せ」

ドガっ!!

盗賊「ぐは!!」

攻撃を受けた盗賊は勇者の所にまで弾かれてしまう。



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--砂漠の迷宮--

盗賊「くそ!あいつつええよ。あいつならまじで魔王倒せるんじゃないの!?」

勇者「盗賊」

盗賊「あぁなに!?今忙しいの!!」

勇者「縄、斬って」

盗賊「あ?……あ、そっか」

ぶち

盗賊「これで逃げちゃえばいいんだ」

カブト「なぬ!?」

勇者「違うよ盗賊、ナイフ一本貸して」

盗賊「え?」

勇者は盗賊からナイフを受け取った。

勇者「自分より弱い男に守られてばかりいるのは少し飽きました」

盗賊「えぇ!?ひどっ!!」

勇者「あはははは」

盗賊「……」

勇者「?どうしたの?」

盗賊「いや、その、あれだよ、ほら」

盗賊は恥ずかしそうに頬をかいた。

勇者「?」

盗賊「いやいいや、行こう勇者、一緒に」

勇者「うんっ」


気付けば2cm先で笑う彼女がいた。


盗賊、勇者「いくぞっ!!」



勇者募集してたから王様に会いに行った 
第四部

蛇 足



※勇者募集してたから王様に会いに行った 第三部190に続きます。
sssukidesuuu.side-story.net/Entry/46/#ps_text  下

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