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199

それから二年の月日が流れた。



200

--王国--

踊子「新王様~リンゴ剥いたんですけど食べますか~?」

賢者改め新王「あ、いや、じゃあもらうよ」

新王は、かつて王様が座っていた玉座に腰かけている。王国の新しい王の座には賢者がついたのだ。
世間には、勇者一行は魔族を助け魔王側に寝返ったという情報が流れていたが、西の代表の協力もあり、それは全くの嘘であると公言された。

踊子「……でもひどいですよね私達……勇者さんの誘惑魔法で操られていたことにしてるなんて……」

新王「うん……でもそうでもしないと盗賊君達の家族も危なかったんだ。……勇者さんにだけ身寄りがいなかったから……生きてる人を護るためにはこうするしか」

踊子「ごめんなさい。貴方のせいじゃないのにね」

賢者は貴族の家系であるのと同時に、魔王討伐パーティの一人である。新しい王として申し分のない資格があったのだ。

新王「これからは少しでも幸せに生きよう……妃」

踊子改め妃「とか言ってるけどww……もう結構幸せでちゅよねぇ~?」



201

--西の王国--

受付「西の王様。書類をお持ちいたしました」

西の代表改め西の王様「あぁ、そこへ置いといてくれ」

勇者討伐戦争後、受付は西の王様とともに西の王国へ移り住んだ。彼女がいつ、王様から西の代表へと寝返っていたのかはわからない。
が、西の王様が王様を殺す際に邪魔をしなかったのは……。

受付「長く……我が主でいてくださいね」

受付が主と認める者は王の器があるもの。
そして老いた王より、野心を持った若い西の王様に魅力を感じていたのだとしても、おかしな話では無い。

西の王様(裏切りも暗殺者の華か……)

人々の予想を裏切り、西の王国は恐ろしい速度で復興を遂げていた。
その要因は力を貸してくれる者の存在。

サラサラ

西の王様は、実の姉のいる王国と永遠の和平を結ぶ準備をしている。

ガチャリ

闘士「う、受付さん、これ、どこ置くんだっけ?」

受付「!!ちょ、墓守の貴方がノックもしないで入って来ていい場所じゃないんですよ!?」



202

--東の王国--

東の王様「お前の息子はどうだ?使えるようになりそうか?」

剣豪「は、てんで駄目だ。なまじ才能がある分根性がなっちゃいない」

東の王様「そうか……。一刻も早く戦力が欲しい。いつまでもお前が最高戦力では未来が詰まる」

剣豪「……あいつも帰ってこないしな」

東の王国の発展は止まったまま。
古き良き時代の余韻に浸り、未来に危機感を感じない一般層。
東の王様は彼らに業を煮やす日々を送っている。

東の王様(このままでは王国にトップを取られてしまう。我らが……)

剣豪は左腕の傷口を見ては思い出す。

剣豪「あーあ、所詮俺もまだまだだったか……ちっ、またあんな奴と戦える日が来るだろうか」



203

--北の王国--

北の王様「どうです?親衛隊のほうはぁ」

人形師「これはこれは王様。至って順調ですねぇ」

広場には若い兵士が集まり、それぞれの武器を持って鍛錬に励んでいた。

召喚士「でもこれは、って奴がいないんでやんすよぉ。あ、見習い兵士の中には見どころがあるやつがいるんでやんすがね」

北の王様「ほぉ、若い世代が育つwwいいことでんなぁww北の王国をしっかりと支えてもらいひょ!!目指せ!永遠のナンバー3ww」

人形師、召喚士(せめてナンバー2じゃないのか)

北の王様の考えは理解しづらい。しかし彼から始まったこの王国は一度も侵略に合うことなく、国民は平和を享受している。
二人は北の王様の先見性の能力を誰よりも信じていた。

北の王様「さぁて、王国の新王様にわいろでも持っていきますわww」



204

--南の王国--

南の王国は厳しい生活を強いられている。
それもそのはず、占領に近い形で四カ国に好き勝手されているからだ。

城門兵A「くあー!!人間どもめええ!!」

鷲男「こら城門兵A、いい加減にしなさい」

城門兵A「これが許せるかにゃん!!あいつら人間に有利な法律ばっか作りやがって!!一体誰のための王国だと思ってるにゃん!?」

城門兵B「そうだぴょん!!」

鷲男「……怒りはわかります。でもまだ耐えられないほどではない。これから改善していけばいいんです」

城門兵B「むお!?鷲男が冷静だぴょん。ちょっと怖いぴょん」

鷲男「がんばりましょう。でないと、顔向けできないですから」



205

--北南の村--

黒いフードを被った男が村を歩いていく。

黒いフード(どこだ、どこにいる……)

少年「あ!!魔王を倒した勇者様だ!!」

子供達が我先にと集まってくる。

黒いフード(……一発、殴ってやらなくては気が済まない。あいつ)

黒いフードの男の右頬には深い切り傷があった。

少年「ねぇ、勇者様!!」



206

--南の島--

緑生い茂る島。海に囲まれた島。
この島の存在を知る人間は少なく、行き方を知る者に至っては皆無に近い。

ここは外部からの侵入を拒絶する最後の島である。

そんな南の島に半年ほど前、ある小さな家が建てられた。
小屋と見間違えるような小さな小さな家が。

ギィ

?「ただいま、今日はいっぱいとれたよ野菜」

??「あ9384gは3jのあsdhがd」

彼女はあれから壊れてしまった。



207

--南の島--

彼女「あ4899い3jgふぁksdg」

時々彼女が何もないはずのところを見て、誰かと会話のようなものをしている……。
一体、彼女の目に映る世界はどんなものになってしまったのだろう。

俺「もうすぐご飯にしようと思うんだけど」

彼女「おmか0w9」

彼女の言葉は人語じゃなくなった。だから彼女が俺に何かを伝えたい時は紙に書く。

『きょうのごはんはなに?』



208

--南の島--

彼女「あああああああああん!!ああああああああん!!」

時々彼女は幼子のように泣き喚く。
鏡で自分の姿を見た時もあれば、夜になって急に泣く時もある。

カリカリカリ

『なんで、あのとき、わたしをつれてにげたのよ』

俺「……ごめん」

俺は震える声でそう答えるのが精いっぱいだった。

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