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189

--王国本陣--

踊子「うっ……こ、ここは」

西の代表「……やっと目を覚ましたね」

踊子「へ?誰?こんな設備……」

賢者「ここは王国側のテントだよ」

踊子「!!な、なんで!?……うそ、捕獲された……」

西の代表「違う、賢者君が貴女を救うために、わざわざこっち側にきたんだ」

踊子「ど、どういうことなんですか!?」

賢者「ごめん……君はきっと反対するだろうと、怒るだろうと思ってた。それでも僕は君を助けたかったんだ」

踊子「怒るに決まってます!!自分だけ助かりたいがために仲間を裏切って敵の所へ来るなんて!!」

西の代表「彼を責めないでくれ……姉さん」

踊子「!?……なに……言って」



190

--王国本陣--

西の代表「わからなくても無理は無い。俺と姉さんが別れたのは、俺がまだ小さい頃だから……」

踊子「嘘……本当に……あの弟なの?」

西の代表「あぁ!!……誘拐された姉さんをずっと探してたんだ!!」

踊子「嘘……本当の本当に!?……よかった。生きてたのね」

踊子は顔に手を当て涙を流す。

西の代表「最初は昔と容姿が変わってたからわからなかったよ。でもあの後王様の記憶を見たんだ。それで……」

賢者(あの本か……)

踊子「ぐすっ……。!!そうだ、ねぇ、弟。お願いよ……もう戦争をやめるよう、王様に頼んで!!」

西の代表「……この戦争を終わらせるのは簡単なことじゃない」



191

--宿屋--

魔王勇者「……どんどん……仲間……いなくなっちゃうねww」

盗賊「……うん」

魔王勇者「そうだよね……私……魔王だもんねww」

盗賊「俺は!!」

魔王勇者「っ」

ガバッ

盗賊は魔王勇者を抱きしめる。

盗賊「俺は……ずっと傍にいるから!!」

魔王勇者「………………………………………………………………………………………………………………………………………………ww」



192

--宿屋--

ギシッ

盗賊「……闘士か?」

闘士「お、おで。ゆしゃさん、寝たか?」

盗賊「あぁ」

魔王勇者「すー、すー」

盗賊「泣きつかれて寝ちゃった」

闘士「そ、そうか」

窓から差し込む月の光が三人を照らしている。

闘士「とうぞく、今日はすまない、ありがとう」

盗賊「ん?あぁいいよ。当たり前じゃないか」

闘士「とうぞく」

闘士は盗賊に近寄り、その手に持っていたものを手渡した。

盗賊「え?なんだこれ?指輪?」

闘士「天使様、に貰った。願いが叶う指輪、らしい。盗賊に、やる」

盗賊「……うさんくさっ!!」

闘士「ぬ!?うさんくさくない」

闘士は冗談と受け取らなかった。

盗賊「ふ、わり、ありがとな。でもこんなの貰ってもなぁ」

闘士「……諦めなければ、願いは、叶う」

盗賊「?なんだよいきなり」

闘士「盗賊、半分諦めた顔、してた」

盗賊「……ちぇ」

賢者『……盗賊君……君も勇者さんを守るんだ。何をしてでも……』



193

--南の王国、門外--

翌日早朝。

ザリ

盗賊「インビジボォ、解除」

魔王勇者の手を引いた盗賊が姿を現す。魔王勇者は大きな帽子を被っていた。

魔王勇者「盗賊……どこ、行く気?」

盗賊「……勇者。王国連合の狙いは君だ」

魔王勇者「……」

盗賊「だから、逃げよう。どこか遠くへ」

魔王勇者「……っ!!駄目だよ、私がいなくなっても、南の王国がそう言っても王国連合は信じない。ただ南の王国が侵略されちゃうよ……盗賊もわかってて言ってるんでしょ?」

盗賊「……っ!」

魔王勇者「私、最後まで戦う。最後まで戦って、それで」

ガシッ

盗賊「……頼むから死ぬ理由を作ろうとしないでくれ……」

魔王勇者「……だって、だって私……」

だって数えきれないくらい人を

闘士「……」

闘士はテラスから二人を見ていた。



194

--南の王国--

亜人王「なに!?勇者さん達がここを出て行った!?いつ!!」

鷲男「わかりません……我々が起床した時にはすでに……」

亜人王「くっ……」(見捨てたと言うのか!?我々亜人を!!)

闘士「ち、ちがう」

亜人王「!?な、貴方も出て行ったのではないのですか?」

闘士「う、ううん」

鷲男「闘士殿は知らされていなかったようです」

亜人王「なんという……仲間すら見捨てて行ったのか」

闘士「ち、違う、そうじゃない」

鷲男「しかし」

闘士「違う!!」

亜人王「!!」

闘士「と、盗賊達は、犠牲を無くすために、出て行ったんだ。そ、それが、盗賊達の、戦いなんだ」

亜人王「……」

闘士「だ、大丈夫、じきに戦争は終わる」

闘士は満面の笑みを亜人王に向ける。

ダダダダダ

城門兵A「亜人王様!!王国連合から使者がきてますにゃ!!」

亜人王「伝令?……」



195

--南の王国--

亜人王「!!貴方方は……」

使者として来ていたのは西の代表と賢者と魔法使いだった。

西の代表「亜人王、単刀直入に言います。魔王を引き渡してください」

亜人王「!?いきなりなにを……魔王……いや、なぜそんな」

西の代表「我が王国連合は昨日の戦いにより、予想だにしない被害を被りました。総兵力の3分の2を失い、これ以上の戦闘はこちらとしても望む所ではありません」

魔法使い「……」

西の代表「しかし、貴方方がまだ魔王を匿うというのであれば話は別です。最後の血の一滴まで、玉砕覚悟で戦う所存です」

亜人王「……失礼、確かに我々は勇者一行を匿っていました。しかし魔王を匿っていた覚えなどありませんが?」

西の代表「亜人王、信じられないことでしょうが、あの勇者と名乗る者こそが魔王だったのです」

亜人王「な、なんという……いや、それならつじつまが合います。あの恐るべき竜は魔王の力でしたか……!?なら、なぜ貴方方は魔王と一緒に」

亜人王は賢者に話を振る。

賢者「……信じてもらうしかないのですが、誘惑魔法をかけられていたんです」

亜人王「…………なるほど。今はそれで納得しましょう。しかし、もう彼女はこの王国にいませんよ。今朝早く逃げ出したようです」

西の代表「なんですって?」

賢者(……ふっ)

ガタっ

魔法使い「それが本当か調べさせてもらう。よろしいな?」

亜人王「わかりました」



196

--王国本陣--

西の代表「魔王が南の王国から逃げ出したのは本当だったようです」

東の王様「……ふむ」

北の王様「んなの関係ありませんやろ!?そのまま征服してしまえばよろしいのでは!?」

西の代表「待って下さい。魔王も魔族もいなくなったというのに南の王国に攻める理由がありません。また多大な犠牲が双方にでることになりますよ?」

受付「……」

西の代表「確かに資源は重要です。ですが彼ら亜人の力はこれからの人類の発展にも多大な貢献をもたらすはずなんです」

東の王様「……俺は構わん。元より乗り気では無かったからな。中央の王が始めた戦争だ。やつのいない今、続ける意味もあるまい」

北の王様「そ、そんなぁ!!」



踊子「……みんな大丈夫かなぁ~」

賢者「今踊子さんの弟君ががんばってくれている。きっと、きっとうまくいくよ」

踊子「だといいんですけど。あ~あ。もう勇者さんには会えないのかなぁ~」

賢者(盗賊君、勇者さん……絶対に生き延びて下さいね)



197

--王国本陣--

西の代表「それではここにサインをしてください、亜人王」

亜人王「……」

そこには明らかに南の王国が不利な条約ばかりが並んでいた。

亜人王(だが……この程度なら仕方がないのか。民を守れるのならば)

サラサラ

東の王様「……戦争終結」



198

3ヶ月後。
遠い南の地で魔法使いが魔王を討伐した。というニュースが世界中に発表された。
魔法使いは証拠として、魔王の右角を持ち帰ると、そのままどこかへと消え去った。

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