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※第三部178の続きからお読みください。
179

--焼け野原--

盗賊(駄目だ、さすがの闘士もあんなやつらに魔法撃たれまくったら原形すら残らない!!)

それでも盗賊の足は……闘士の方を向こうとしなかった。

盗賊(でもでもでもでもでもでもでも!!!!くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!)

盗賊「!!」

ザっ

盗賊は闘士の方へと、進行方向を変えた!

盗賊「仲間が一人でも欠けたら勇者が悲しむんだよおおおおおおおおお!!」

闘士『とう、ぞく!?だめだ!くるな!!』

盗賊「仲間一人助けられないような奴が、勇者を守れるかぁあ!!」

寄ってたかって放たれる人造勇者の魔法、それを

盗賊「スキル、マジックドレイン!!」

ドゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

人造勇者一号「!?」

人造勇者V3「な、なんだとっ!?我らの魔法を……吸収しているだと!?」

ブスブスッ

闘士『と、とう、ぞく!!』

爆炎の中から焼け焦げた盗賊が出現する。

盗賊「行くぞ闘士ぃぃい!!」



180

--焼け野原--

人造勇者二号「くっ!!死にぞこないの分際で!!」

鷲男「大丈夫ですか!?盗賊殿!!」

盗賊「ごふっ、はぁ、はぁ」

鷲男(すごい……もう限界を超えているだろうに……)

盗賊「『勇者を守る』『仲間も守る』『両方』やらなくっちゃあならないってのが『主人公』のつらいところだな」

闘士『とうぞく!!』

人造勇者V3「ぬかせええ!!」

盗賊「魔力、全開放」

ドオオっ!!

鷲男「!?これは吸収した魔力!?」(ただでさえボロボロの状態だったんだ、許容量を超えた魔力を吸収までして……駄目だ、危険すぎる!そんなことをしては!!)

盗賊の体にいくつもの切れ目が入る。。

鷲男「体が持ちませんよ!?盗賊殿!!」

盗賊「どうっ、なろうとっ、構うかッッ!!」

闘士『!?』

ブチっ

盗賊の眼帯が弾け飛び、そこから魔力が流れ出る。ゆらゆらと揺れる金色の炎。

盗賊「……一度、やってみたかった技があるんだ」

盗賊はナイフを捨て、剣を握るようなポーズをとる。

ズズズ

人造勇者一号「!!巨大な、魔力でできた、剣が!!」

盗賊「奥儀、」

バチ、バチバチバチ!!!

盗賊の握る剣が眩いばかりの光りを放つ!!

人造勇者V3「我らの魔力を利用しているのか!?」

盗賊「盗賊ぅぅぅぅスラッッッッッシュゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!!

ギャオオオオオオオオオオオオン!!!



181

--焼け野原--

ブスブス、シュゥゥゥゥウウゥ

鷲男「……た、倒したのか!?あの人造勇者達を……」

まるで巨大な何かで薙がれたように、辺り一面に巨大な傷跡が残っていた。
そして人造勇者の三体は、血を流して地面に倒れている。

闘士『と、とうぞく、だいじょぶか?』

盗賊「がぶっ!!」

盗賊は大量の血を吐き出す。

盗賊「は!!まずい、勇者が!!」

鷲男「え?」

盗賊「そうだ鷲男!!頼む、勇者のもとへ連れてってくれ!!空を飛べるお前なら!!」

鷲男「いやしかし、今は戦争中です!!持ち場を離れては」

盗賊「頼む!!」

鷲男「……っく」

闘士『鷲男、おでからも頼む』

鷲男「闘士殿!?しかし、それでは!!」

闘士『ここはおで一人でなんとかする!!いけ!!』

盗賊「……闘士……」

闘士『また、守られた……とうぞく、少しは借りを返させろ!!』

鷲男「……っ!!すぐに帰ってきます!!持ちこたえて下さいね!?」

盗賊「わりぃ、頼んだ闘士!!」

バサッ



182

--焼け野原--

魔王勇者「……あそこが本陣か」

魔王勇者は腕を向ける。すると赤竜の首もそちらに向いた。

魔王勇者「第二射、は」

盗賊「!!勇者あああああああああああああああ!!」

魔王勇者「!!」

魔王勇者の体がびくりと震えた。
上を向くと、そこには

盗賊「駄目だぁあああ!!よくわからないけど、それは駄目だああああああ!!」

盗賊が空から降ってきたのだ。

ドサリ!!

魔王勇者「とう……ぞく」

靄のかかっていた魔王勇者の心が……少しだけ晴れた。

盗賊「いっっつ……ごふっ」

盗賊は立ち上がり、魔王勇者の肩を抱く。

盗賊「だめだ!!もう、あんなことをしては……!!」

魔王勇者「っ!!」

悲しい顔で叫ぶ盗賊の顔を見て、心が痛んだ。

赤竜「ぐおおおおおおおお!!」

しかし赤竜は止まらない。

魔王勇者「っ!?ま、まって!!」

赤竜の首を少しずらすも、

ギュイン

再び発射される炎弾。



183

--焼け野原--

兵士I「ぎゃぎゃあああああああああああ!!!!」

北の兵士Z「うあああああああああああ!!」

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

悪夢の二撃目。
目標の射線上からは随分離れたものの、その威力はあまりに絶大。
今度は8万人の命を一瞬で奪った。

ゴゴゴゴゴゴ

盗賊「くっ!!こいつを、早く止めるんだ!!これはこの世にあっちゃいけない!!」

魔王勇者「……なんっで……」

盗賊「勇者?」

魔王勇者「……なんでよ!!君だって私の目の前で人を殺して見せたじゃない!!殺さなきゃ死ぬって!!一人殺すのは良くて、いっぱい殺すのは駄目なの!?」

盗賊「勇者……」

魔王勇者「なんでよ!!どうして……うあああああああああああああん!!!!」

魔王勇者は、まるで幼い子供のように泣いた。



184

--焼け野原--

兵士W「ご、ご報告申し上げます!!先ほどの光が再び我が軍を……え?」

本陣はめちゃくちゃになっていた。
大賢者とサキュバスの死体、散乱している氷の弾丸と血痕。

そして、

王様「ごほっ!!」

王様が西の代表の剣に貫かれている。



185

--焼け野原--

王様「が……」

東の「!!……」

受付「……」

北の王様「ひっひええええええ!!??」

王様「き、貴様……助けてやった恩を!!」

西の代表「白々しい……西の民を皆殺しにした張本人が」

王様「!!」

北の王様「!!??」

王様「ば、馬鹿なことを!!誰か!!こいつを討つのじゃ!!ごほっ!!」

受付「……」

西の代表は胸元から一冊の本を出した。

王様「……それは!!」

西の代表「盗賊の家を家探ししている時に見つけたものだ。これであんたの過去は見た」

王様「!!!!」

西の代表の剣は王様の首をはねた。

西の代表「……今から俺がこの戦いの指揮官だ!!」



186

--焼け野原--

遥か遠くの空に煙が上がる。
それは王国連合の撤退の証だった。

盗賊「……今日の戦は終わり……ということか」

魔王勇者「ひっく、えっぐ!!」

魔王勇者は盗賊の胸で泣き続けている。

亜人王「……一日目は防いだ……圧倒的な虐殺で」

亜人王は悲しい顔をして戦場を見ていた。

ザっザっ

賢者「……」

賢者は瀕死状態になりながらも、踊子を担いで帰還した。
当初予定したよりも優位な戦況、しかし誰一人としてそれを喜ぶものはいないのなぜか……。

闘士「お、おで」

鷲男「凌ぎ……きりましたね」


その夜。

皆満身創痍だった。城内は死者の身内の泣き声と、傷を負った兵士の呻き声で満たされている。

盗賊「ふざけるな!!!!」

突然、盗賊の叫び声が木霊した。



187

--宿屋--

盗賊「あんたっ!!何考えてるんだ!!?こんな状況なんだぞ!!」

賢者「……」

盗賊に殴られ口を切った賢者は、右手の甲で拭う。

賢者「こんな状況だからさ、盗賊君。僕は……王国連合に行く」

魔王勇者「あ……う」

盗賊「っっ!!よくもそんなことが言えるな!!南の王国のみんなを見捨てるつもりか!?勇者だってこんな状態だっていうのに!!」

賢者「……君の本音はそこだろ?君は南の王国の人達が大事なんじゃない、勇者さんが大事なんだ」

盗賊「!!」

闘士「お、おで」

賢者「悪いとは言わないさ。僕も一緒だ。何よりも踊子さんが大事なんだ。例え南の王国の人達を……な、仲間を見捨てでも!!」

盗賊「ッッ……踊子さんがひどい状態だってのはわかるさ、だがなんで今王国連合側に……!!」

賢者「前に話してくれたんだ、踊子さんは勇者を量産するための実験台だったんだって。だから不安定で暴走してしまうし、きっと寿命も……」

盗賊「……」

賢者「だが、今日、盗賊君も見ただろ?勇者の量産は成功していたんだ。技術は確立している、王国へ行けばきっと彼女を助けられるんだ!!」

盗賊「確証も無いのに……出てこうとするのかよ!!……賢者さんの力がいるんだよ」

賢者「……ごめん」

盗賊「っ!!」


亜人王「……」

鷲男「……彼らも……迷っているんですね」



188

--宿屋--

賢者「そうやってなんでもかんでも勇者勇者勇者勇者、君のそれは勇者さんのためじゃなくて勇者さんのせいに聞こえるよ」

盗賊「!!賢者ああああああああああ!!」

魔王勇者「もういいっ!!もういいからっ!!いかせてあげようよぉ!!」

魔王勇者は盗賊を抱きとめる。

魔王勇者「賢者……今までお世話になったね……」

賢者「今まで……ありがとうございました」

盗賊「俺はっっ!!……俺の初めての友達だと……思ったのに……」

賢者「……盗賊君……君も勇者さんを守るんだ。何をしてでも……」

闘士「けん……じゃ」

賢者と踊子がパーティから外れた。

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