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201

--南の島--

彼女「ao4おいr0h2すぅい!」

猫「にゃにゃにゃ!」

日中は猫と戯れて過ごす彼女。まさに完全なニートだ。

俺「それじゃあ行ってくるよ」

彼女「……」

ブンブン

彼女は、猫を盾にして顔を隠し、猫の腕を使って手を振った。
猫で顔を隠しても、二つの角は隠れない。




202

--南の島--

俺「ただいま、今日は魚を……どした?」

俺達の住んでいる家が、誰かに荒らされたようにめちゃくちゃになっていた。そして彼女は部屋の隅でうずくまっている。
その瞳は涙で濡れていて……俺を睨んでいる。
そして部屋の中には少量の血が点々と。

俺「何か……あった?」

彼女「……ああああああああん!!」

彼女がまた泣いた。

それから猫をみない。



203

--南の島--

彼女「み8う4えd87うhうぇぢゅhjうぇfdしゅい!!」

俺「!?」

ガバッ

突然の絶叫が聞こえ夢から覚める。

彼女「あくcjydくぁhyfd!!!!」

彼女は頭を抱えて首を振る。
二人で生活をし始めてからよくある光景……。
彼女はずっと……戦っていた。

俺「今水を!!」

彼女「!!」

俺が動いた瞬間、彼女の何かが反応した。

シャッ

俺「!?」

ダンっ

彼女「がい8えwr4g24じょぇあrg!?」

彼女は俺を押し倒して馬乗り、そして俺の首を絞めた。

俺「あっぐうう!!」

彼女の力は既に人の域を超えている。絞めあげられるよりも握りつぶされるほうが先かもしれない。

ブシュッ

とうとう彼女の指が首の中へと侵入する。

彼女「いおうあrhyg9824あ!!」

彼女が捲し立てる言葉は理解できない。でも彼女のことは理解しているつもりだった。



204

--南の島--

彼女「あ9g、と9い、kぼs!」

彼女は俺の胸で泣いている。夜中であることも構わずに。
俺は首に布をあてつつ彼女を抱きしめる。
こんなに強くなったのに、体はとても細くなってしまっていた。

俺「……」

そういえばここ最近、ちゃんとご飯を食べてくれなかった。

彼女「……」



205

--南の島--

俺「う……ん?」

朝目を覚ますと、目の前に彼女の顔があった。

彼女はふとんから降りると、ぺこりと頭を下げた。

俺「え?あ、あぁおはよ」

彼女はさらさらと紙に何かを書いている。

俺「ふああ……どしたの?」


彼女「……あhg」









『いままでありがとうございました。もうじゅうぶんです。ころしてください』



206

--南の島--

俺「ッ!!……そんなことできるはずがないだろ……俺は君を……」

彼女「……」

『私はもう魔王なんだよ、今はかろうじて理性を保っているけどいつまで続くかはわからない』

俺「魔王は……生きていちゃいけないのか?」

無責任に言った昔の自分の言葉が今は辛い。

彼女「!!……」

さらさら

『なんとなくだけど、わかるの、もうあと十数年もすれば、新しい勇者がくる』

俺「……なら、そいつを俺が倒すよ」

彼女「!?」

さらさら!!

『無理だよ!!すごく強い!!絶対に勝てない!!』

俺を見る彼女の瞳は濡れている。
懇願するように彼女の瞳は訴えている。
もう辛いのは嫌だ、と。
もう楽にしてくれ、と。

俺「……俺は」



207

--南の島--

俺「それでも君とずっと一緒にいたいから」

彼女「」

からん

えんぴつを落とした彼女は驚いたような顔をして、そして

俯いた。

彼女「……………………やめてよ、もう」

俺「!?え、今喋れて!!」

彼女が口にしたのは人語。

彼女「みんなみんな、諦めたのに……」

彼女は震えながら奥歯を噛みしめている。

俺「……」

彼女「……っひ」

もはや彼女にとって、期待を持つということも苦痛なのだ。

俺「……」

だがそんなことは、とうの昔にわかっている。

俺「……色んなことを、いや全てを君のせいにしててごめん……でも昔も今もこれからも……君はたった一つの俺の生きる理由なんだよ……」

彼女「……」

一時的に彼女の震えが止まる。

俺「君が魔王になっても気持ちは変わらない。敵が誰だろうと関係ないんだ、モンスターだろうが魔王だろうが勇者だろうが。君と一緒に生きていけるなら……誰だって倒してみせる」

彼女「……っ」

俺「……君が好きなんだ」

彼女「う……うぅあ……!」

彼女はぼろぼろと涙を零した。

俺「だから……死なないでくれ……死んでいった人達と、殺してしまった人達の分まで生きよう!!」



208

--南の島--

彼女「……」

俺「……」

彼女「……うぅ……いいのかな……私、そんなこと望んで」

俺「少なくとも俺は、そう望んでる」

彼女「……すん」

俺「……」

彼女は止まらない涙をふく。

彼女「………………わかった……わかったよぉ!!……私だって、私もっ……貴方が……」

彼女の顔は涙と鼻水によってぐしゃぐしゃだ。それでも彼女は、

彼女「……!」

顔を上げて、真っすぐ俺を見つめて……言った。


好きだから


盗賊「……っ!!……」

反則だと思った。顔が一気に真っ赤になったのを自覚する。
盗賊は顔を見られないように俯いた。
色んな気持ちが混ざり合って勇者を直視できなかったから。

盗賊「……ん」

そしてあることを思い出して上着のポケットをまさぐる。

俺「あった……これを……」

彼女「え?これって……」

俺「あの後闘士の遺体を探しに行った時に見つけたんだ。闘士は……見つけられなかったんだけど」

彼女「綺麗な……指輪」

俺「なんとなく……君に似合うかな、と思って……あ、拾い物、ってとこには目をつぶって欲しいんだけどさ」

彼女「うぅん、ありがとう……これ……どの指にはめればいいの?」

俺「……この指」

彼女「……」

彼女はぐしゃぐしゃに泣きながら、まぶしい笑顔を俺に向けた。



209

--南の島--

それからしばらく経って。

嫁「ほら起きてよ」

俺「……んあ」

嫁「今日は闘士のお墓参りいくんだって言ってたのに!!なんで寝坊してんの!!」

俺「……だってさぁ嫁がさぁ」

嫁「……早く支度して/////」



あれからちょっとして、角を切った。
ちょっと血が出たけど、やっぱし邪魔なものだったし、町に買い物を行く時とか目立っちゃうし。


嫁「……どうかな」

俺「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い」

白いワンピースに麦わら帽子。季節は巡ってもう夏である。薬指の指輪が光って眩しい。いや嫁の笑顔のが眩しい。

嫁「久しぶりの遠出だぁ……」

角のせいかなんのせいかはわからないけど、もう嫁から黒いオーラを感じなくなった。
いわゆる……輝石?(指輪的な意味で)

俺「よし、準備完了。じゃあ行きますか」

やたらめったら厳しい人生だったけど、きっとこれからはその反動で幸せになれるに違いない。

嫁「うん、行こう♪」

俺「まて、パッドはおいてけ」





勇者募集してたから王様に会いに行った



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