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181

--焼け野原--

西の代表「……これは」

本陣はめちゃくちゃになっていた。
大賢者とサキュバスの死体、散乱している氷の弾丸と血痕。

東の王様「……魔族が攻め込んできたのだ」

西の代表「なるほど……」

王様は大賢者の死体の傍に立っていた。

王様「すまぬ……昔から面倒ばかりかけたな」

北の王様「ひぃやー!!おおおお恐ろしい!!がたがた」

西の代表「王様……大賢者様は死んだのですね」

王様「?西の代表か……あぁ」

西の代表「そうですか……」

シャラン

西の代表は剣を抜いた。

王様「西の代表。仇は討てたのか?」

西の代表「えぇ……」

ズシュッ

王様は西の代表の剣に貫かれる。



182

--焼け野原--

王様「が……」

東の「!!……」

受付「……」

北の王様「ひっひええええええ!!??」

王様「き、貴様……助けてやった恩を!!」

西の代表「白々しい……西の民を皆殺しにした張本人が」

王様「!!」

北の王様「!!??」

王様「ば、馬鹿なことを!!誰か!!こいつを討つのじゃ!!ごほっ!!」

受付「……」

西の代表は胸元から一冊の本を出した。

王様「……それは!!」

西の代表「盗賊の家を家探ししている時に見つけたものだ。これであんたの過去は見た」

王様「!!!!」

ザブシュッ

西の代表の剣は王様の首をはねた。

西の代表「……今から俺がこの戦いの指揮官だ!!」



183

--焼け野原--

遥か遠くの空に煙が上がる。
それは王国連合の撤退の証だった。

盗賊「……今日の戦は終わり……ということか」

魔王勇者「ひっく、えっぐ!!」

魔王勇者は盗賊の胸で泣き続けている。

亜人王「……一日目は防いだ……圧倒的な虐殺で」

亜人王は悲しい顔をして戦場を見ていた。

ザっザっ

賢者「……」

賢者は瀕死状態になりながらも、踊子を担いで帰還する。

踊子「はっ、はっ……」

当初予定していたよりも優位な戦況、しかし誰一人としてそれを喜ぶものがいないのなぜか……。


その夜。

皆満身創痍だった。城内は死者の身内の泣き声と、傷を負った兵士の呻き声で満たされている。

盗賊「ふざけるな!!!!」

突然、盗賊の叫び声が木霊した。



184

--宿屋--

盗賊「あんたっ!!何考えてるんだ!!?こんな状況なんだぞ!!」

賢者「……」

盗賊に殴られ口を切った賢者は、右手の甲で拭う。

賢者「こんな状況だからさ、盗賊君。僕は……王国連合に行く」

魔王勇者「あ……う」

盗賊「っっ!!よくもそんなことが言えるな!!南の王国のみんなを見捨てるつもりか!?勇者だってこんな状態だっていうのに!!」

賢者「……君の本音はそこだろ?君は南の王国の人達が大事なんじゃない、勇者さんが大事なんだ」

盗賊「!!」

賢者「悪いとは言わないさ。僕も一緒だ。何よりも踊子さんが大事なんだ。君が闘士君を見捨てたように」

盗賊「ッッ……踊子さんがひどい状態だってのはわかるさ、だがなんで今王国連合側に……!!」

賢者「前に話してくれたんだ、踊子さんは勇者を量産するための実験台だったんだって。だから不安定で暴走してしまうし、きっと寿命も……」

盗賊「……」

賢者「だが、今日、盗賊君も見ただろ?勇者の量産は成功していたんだ。技術は確立している、王国へ行けばきっと彼女を助けられるんだ!!」

盗賊「確証も無いのに……出てこうとするのかよ!!……賢者さんの力がいるんだよ」

賢者「……ごめん」

盗賊「っ!!」

亜人王「……」

鷲男「……彼らも……迷っているんですね」


185

--宿屋--

賢者「そうやってなんでもかんでも勇者勇者勇者勇者、君のそれは勇者さんのためじゃなくて勇者さんのせいに聞こえるよ」

盗賊「!!賢者ああああああああああ!!」

魔王勇者「もういいっ!!もういいからっ!!いかせてあげようよぉ!!」

魔王勇者は盗賊を抱きとめる。

魔王勇者「賢者……今までお世話になったね……」

賢者「今まで……ありがとうございました」

盗賊「俺はっっ!!……俺の初めての友達だと……思ったのに……」

賢者「……」

賢者と踊子がパーティから外れた。




186

--王国本陣--

踊子「うっ……こ、ここは」

西の代表「……やっと目を覚ましたね」

踊子「へ?誰?こんな設備……」

賢者「ここは王国側のテントだよ」

踊子「!!な、なんで!?……うそ、捕獲された……」

西の代表「違う、賢者君が貴女を救うために、わざわざこっち側にきたんだ」

踊子「ど、どういうことなんですか!?」

賢者「ごめん……君はきっと反対するだろうと、怒るだろうと思ってた。それでも僕は君を助けたかったんだ」

踊子「っ!!怒るに決まってます!!自分だけ助かりたいがために仲間を裏切って敵の所へ来るなんて!!」

西の代表「彼を責めないでくれ……姉さん」

踊子「!?……なに……言って」



187

--王国本陣--

西の代表「わからなくても無理は無い。俺と姉さんが別れたのは、俺がまだ小さい頃だから……」

踊子「嘘……本当に……あの弟なの?」

西の代表「あぁ!!……誘拐された姉さんをずっと探してたんだ!!」

踊子「嘘……本当の本当に!?……よかった。生きてたのね」

踊子は顔に手を当て涙を流す。

西の代表「最初は昔と容姿が変わってたからわからなかったよ。でもあの後王様の記憶を見たんだ。それで……」

賢者(あの本か……)



188

--宿屋--

魔王勇者「……どんどん……仲間……いなくなっちゃうねww」

盗賊「……うん」

魔王勇者「そうだよね……私……魔王だもんねww」

盗賊「俺は!!」

魔王勇者「っ」

ガバッ

盗賊は魔王勇者を抱きしめた。

盗賊「俺は……ずっと傍にいるから!!」

魔王勇者「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………w」



翌日。




189

--南の王国--

亜人王「いいか、あと少しの辛抱だ!!これを退けられれば、我が国に平和がもう一度訪れる!!」

亜人兵『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』

魔王勇者「は……ha」

盗賊「……」



--王国連合本陣--

西の代表「この戦で最後だ!!この戦で、人の醜い争いを終わらせる!!敵陣にはなぜか倒したはずの魔王がいるようだが……こちらにも勇者に匹敵する力を持った戦士達がいる!!なんとしても魔王を倒し、俺達の手で平和を勝ち取るんだ!!」

王国連合兵『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』



--焼け野原A--

盗賊「はああああ!!」

ザシュ

兵士I「うあああああ!!」




--焼け野原B--

召喚士「くっくっく~こんどはこれを召喚でやんす~」

キマイラ「ぐおおおおおおおおおおお!!!!」

ドオオン!!



--焼け野原C--

鷲男「諦めるな!!諦めたら散って行った同士達の命が無駄になるぞおおおおおお!!!!」

亜人兵B「やああああああ!!!!」


チギィン!!ヒュードォォン!!

……


この日、南の王国は、

勇者達は





敗北した。



190

それから二年の月日が流れた。

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