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141


--谷--

受付「より巨大な障害を除去するためなら多少の犠牲も仕方がないと?」

盗賊王「だまれ!!」

受付「自分勝手な正義で、タンスから薬草を取るな!!!!」

ズブシュッ!!!!

盗賊王「ぐはっ!!!」

受付のナイフは盗賊王の左目を抉り取る。

受付「……貴方の行動は幼稚です。誰かに認めて欲しいから、自分を捨てた人間を見返したいから。貴方のそれは下らない復讐です。一体いつになったら目を覚ます気ですか」

盗賊王「だまれっ!!そういうお前達だって俺の仲間を!!」

受付「あら?犯罪者に生きる価値があるんですか?」
142

--谷--

受付「やはり存在自体が犯罪者である職業の言うことは違いますね。盗賊。他と違い唯一の犯罪者」

盗賊王「づ!!お前はなんだ!!アサシン!!人を殺す名を持つ暗殺者が!!」

受付「私は人々の安寧のために害虫を駆除する闇の刃。盗賊風情が暗殺者を語るな」

部隊長D「と、とう……ぞくおう」

盗賊王「!?部隊長D!!」

盗賊王は部隊長Dの元に駆け寄る。

ガバッ

部隊長Dの下半身は焼け焦げていた。

部隊長D「今逃げ道を……占いました。今来た道はだめです……山の方に逃げてアジトへ……」

盗賊王「待ってろ!!今こいつらを」

部隊長D「やめて下さい!」

盗賊王「!!」

部隊長D「無理です……いくら盗賊王でも。この人達が相手では……」

盗賊王「やってみなくちゃわからんだろ!!」

部隊長D「盗賊王だけでも逃げて下さい」



143

--谷--

召喚士「クソチャンスでやんす」

ザリ

受付「まだ待って下さい」

受付は召喚士に制止をかける。

召喚士「ちぇー。早く帰って温かいコーンスープでも飲みたいでやんすのに」


ザク、ザク

人形師「ん?おぉこれはこれは」

狩人「うぅ……寒い」



144

--谷--

部隊長D「……盗賊王、これ持ってって下さい。故郷から出てきた時に妹からもらった……イヤリングなんです」

盗賊王「……」

部隊長D「今度から私の代わりに盗賊王を護ってくれるようにお願いしましたから」

盗賊王「……」

部隊長D「ほら、早く。なぜか相手も待ってくれています。だから……」

盗賊王「……巻き込んで……すまなかった」

部隊長D「好きでした」

ザシュ

部隊長Dは飛んできたナイフで、

受付「まさしく茶番でしたね」



145

--谷--

盗賊王「……」

盗賊王は部隊長Dの亡骸を雪の上に静かに下ろし、スッ、と立ち上がった。

受付「これで残るのは貴方だけになりましたね」

盗賊王は無言でポーチから腕輪と目玉の置物を取りだした。

受付「!?」(……これが魔王の骨……)

盗賊王「……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

盗賊王は目玉の置物を自分の左目の眼窩に押し込んだ。

人形師「!?これは」



146

--王座の間--

次の日。

受付「……これで谷での報告を終わります」

王様「そうか……よくやってくれた。御苦労だったな」

受付「いえ、我が主様の命なれば。魔王の骨は目玉の置物を除き、全て回収済みです」

王様「そういえば西の王国の件なのだがな……推測通りだったよ」

受付「本当ですか?西の王国の件と言いますと……」

王様「あぁ……西の女王様は古代の対人兵器を掘り起こしていたんだ」




147

--王座の間--

受付「なんという恐ろしいことを……」

大賢者「うむ。もし西の女王様のもくろみ通りことが進んでいたら、世界の勢力バランスが崩れていただろう」

王様「それだけじゃない。西は東を滅ぼそうとしていたからな」

受付「人の業とは……深いものなのですね」

王様「このことは国をあげてのものだったはずだ。国民にばれずにこそこそとできるレベルではない。つまり……」

大賢者「国民の大多数……いや、そうだな、少なくとも大人はこのことについて知っていたはずだ」

受付「……理解いたしました。ご命令を、我が主様。貴方様の一声で、再び私は血の雨を降らしてみせます……世界安寧の為に」

王様「焦るな。お前には他にやってもらいたいことがあるのだ」

受付「お言葉ですが主様、私以外に」

王様「地下牢に繋いでいるあいつを使うのだ」

受付「……飼いならせますか?」

王様「嘘はこの50年で上手くなったからな……」

大賢者(平和……か)



148

--地下牢--

王様「気分はどうだ、盗賊王よ」

盗賊王「……」

王様「……口をきく気ににもならんか。いや、そうであろうな」

盗賊王「……」

受付「顔をあげなさい。王様の話をちゃんと聞きなさい」

盗賊王「……」

王様「……ふむ。仕方のない……盗賊王よ、仲間を助けたくないか?」

盗賊王「っ!!」

ガン!!

盗賊王は後頭部を牢屋の壁に叩きつける。

盗賊王「仲間だと!?仲間はみんな死んださ!!一人残らずお前らに殺されてな!!」

王様「殺したさ。ただな、まだお前の仲間は死んでいないのだ」

盗賊王「ふざけるっ……な、どういう」

王様「言葉の通りの意味さ。お前が谷で失った仲間達は皆生きておる」

受付「死体を回収し、蘇生させたのです」

盗賊王「!!!!」



149

--地下牢--

盗賊王「あいつらが……生きて」

王様「ただし、谷にいたやつらだけだ」

盗賊王「!?アジトにいた俺の仲間は!?」

大賢者「勇者一行には事前に、やりすぎないよう釘をさしていたのだがな……死体を回収できるような状況ではなかった」

盗賊王「!!!!……あ……あぁ」

受付「うなだれてる暇はありませんよ、貴方にはやってもらいたいことがあるんですから」

盗賊王「俺に……何をさせる気だ」

王様「西の王国に行って兵士達の護衛兼統率を任せたいのだ」

盗賊王「……いやだと言ったら?」

受付「貴方の仲間が目を覚ますことは二度とないでしょう」

盗賊王「……わかった。だがなぜ西の王国へ?」

王様「覚えているか?お前が西の王国から出ていった日のことを」

盗賊王「……サキュバスに襲われた日のことか?」

王様「そうだ。西の王国の民が氷漬けにされた日のことだ」




150

--地下牢--

盗賊王「それがどうした?そのことと兵士を送ることになにか関係があるのか?」

大賢者「あぁ……氷漬けになっている民を爆破するのだ……」

盗賊王「!?しょ、正気か!?いや、それ以前になぜ今まで放置していたんだ!!お前らそれでも」

王様「お前は魔族について知らないようだ」

受付「魔族の魔力による攻撃を受けると、人間には特殊な症状が現れるのです」

盗賊王「特殊な症状……?」

王様「魔族の魔力は非常に強力でな……通常、人間が攻撃を受けてからすぐに処置を施さないと……」

大賢者「約一日で魔族になり果てる……」

盗賊王「な……」

王様「冷凍状態であれば、確かに死を回避するための24時間のルールからは逃れられる……だがな、魔族の魔力によってそれが引き起こされたのであれば話は別なのだ……魔力による身体の浸食は凍っている間も行われている……今あそこで佇んでいる彼らが氷から解放されたら……」

盗賊王「そん……な」

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