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91

--失われた王国--

盗賊「か、金なら払うから見逃してくれ」

護皇「ここでは金なんて使えねェぜよ」

勇者「え」

護皇「ここでは働かなきゃなんもくえねぇのさ。理想的ぜよ?」

盗賊「なるほど」

護皇「だからニートは死ぬ」

盗賊「……なるほど」

勇者「じゃあ私も働きますからどうか見逃してやってください!」

護皇「いいよお譲ちゃん貧乳可愛いから許す」

勇者「何このホームレス」
92

--失われた王国--

盗賊「あ、そうだ、俺、ここに用事があってきたんだよ!!シャーマンって人がここにいるって聞いたんだ!!」

護皇「あーあー。よくいるわそういう馬鹿なやつ。それで砂漠渡ろうとして大抵死んじゃうんだよなぁ。お前達はまだ運がいいぜよ」

盗賊「なぁ、その人に会わせてくれないか!!」

盗賊は真剣なまなざしで護皇の瞳を見る。

護皇「……なるほどね。誰か仲間でも死んだか?」

盗賊「!!」

勇者「……あ」

護皇「まぁいいぜよ。あいつも暇なら相手してくれんだろ。ほら、あそこの塔の所にすんでるぜよ」

護皇は窓から塔を指さした。

盗賊「あそこに……」



93

--失われた王国--

盗賊「よし行こう勇者!あ、おっちゃんお世話になりました!!これ少ないけど気持ち」

盗賊はスッと白い

勇者「!!!!!!なんで私の下着を持っている!!」

護皇「なるほど誠意は伝わったぜよ」

さっと受け取って懐に入れる護皇。

勇者「あんたも受け取らないで返せ変態!!」

護皇「貰ったものは返せないぜよ」

勇者「こいつら……完全に同類だ……」



94

--失われた王国--

蝶々亜人「それー!」

栗毛の少女「あははは!冷たいよー!」

ガーゴイル「ぎゃうー!」

馬「ひひーん」

勇者「すごい……亜人、人、モンスター、動物。全部違う種族なのにみんな仲良く暮らしている」

盗賊「あぁ、確かにここは楽園だな」

人魚「あら、そこのお兄さんちょっと寄ってかない?」

橋の下の川から可愛い人魚が現れた。

勇者「へぇ。こんなに可愛い顔してる人魚なんているんだ」

盗賊「今行きます!!」

盗賊は川へ向かって飛んだ。

ガシッ!!

勇者「……あれ~?シャーマンさんの所に行くんじゃなかったっけ?」

盗賊「あぁすいません!!足を掴んで宙ぶらりんはやめて下さい!!」



95

--失われた王国、塔--

シャーマン「それで?なんの用かしら?」

盗賊「……噂はかねがね聞いています。死者との交信を可能にする、と」

シャーマン「ふむ」

勇者「……」

シャーマン「そうだね、一人くらい見てやってもいいかな。はるばる遠い所から来たみたいだしね」

盗賊「あ、ありがとうございます!!」

シャーマン「それで?どっちの願いを聞いてやればいいのかな?」

盗賊「あ……そっか。勇者も、会いたい人がいる……よな」

母親、とか。

勇者「……ううん、それはいいよ」

勇者はすっと立ち上がった。

勇者「お母さんとのことは一応けじめをつけたし、盗賊が会いたい人に会えばいいよ」

外で待ってるね、と勇者。

盗賊「ごめん……」



96

--失われた王国、塔--

シャーマン「さて、誰に会いたいのかな?」

盗賊「……俺」

シャーマン「あーまてまて、あててみようか?むむむ。ふむ。お前さん、小さい頃に父親が家を出ていったのか」

盗賊「!!」

シャーマン「そしてそれから全然音沙汰無し。そしてお前さんはこう考えている。親父殿は死んでおるかもしれない、と……」

盗賊「……すげぇ。なんでわかるんですか?」

シャーマン「テレパシー、に近いものをもっていてね。あの世との交信だってテレパシーの一種だからさ」

盗賊「?まぁよくわからないんですけど、違います」

シャーマン「ふむ」

盗賊「俺が、俺のせいで命を落とした、大事な仲間に会いたいんです」



97

--失われた王国、塔--

シャーマン「ふむ……名は、闘士、か」

盗賊「!!はい!!」

シャーマン「そうか……じゃあやってやるが……どんな結果になっても暴れてくれるなよ?そして後悔するなよ?」

盗賊「!!……はい」

シャーマン「そうか、じゃあ始めるぞ」

シャーマンがそう言うと部屋中のろうそくに火が灯る。

盗賊「ごくり」

シャーマン「ハンニャラニャラニャラホイサッサー」

シャーマンは不思議な呪文と奇妙な踊りをし始めた。

勇者「……」

勇者はその様子を部屋の外から盗み見ていた。



98

--失われた王国、塔--

シャーマン「アイヤッサー!!」

バチバチバチ!!

盗賊「うおおお!!」

シャーマンの体を電流が走り、猛烈な風が吹く。

盗賊「げほごほっ!……シャーマン、さん?」

シャーマン「……」

シャーマンは仁王立ちをしている。心なしか逞しい体つきで。

盗賊「と、闘士?」

シャーマン『お、おで』



99

--失われた王国、塔--

盗賊「と、闘士!?本当に闘士なのか!?」

シャーマン『お、おで』

盗賊「闘士……俺、俺どうしてもお前にもう一度会いたかった……」

シャーマン『……と、盗賊』

盗賊「ん?どうした闘士」

シャーマン『……お、おでは盗賊に会いたくは、無かった』

盗賊「!!」

シャーマン『そんな盗賊の顔なんて、見たく無かった』

盗賊「……そ、そりゃ、そう……だよな。お前を、お前を見捨てた男だもんな、俺は」



100

--失われた王国、塔--

シャーマン『ち、違う!!そんなことを言ってるんじゃない!!』

シャーマンは近づいて盗賊の胸首を掴んだ。

盗賊「!?」

シャーマン『な、なんだその情けない顔は!!あ、あの時ゆしゃさんを守り抜くって決めた時のあの顔はどうした!!』

盗賊「!!!!」

シャーマン『お、おでのことなんか悔やんでる暇はあるのか!?と、盗賊にとって一番大事なのはゆしゃさんだろう!!』

盗賊「お、俺……」

シャーマン『……と、盗賊』

盗賊「だってもう……きついんだよ……」

勇者「!?」

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